#23 アムリトサル。ターバンからしか摂取できない栄養がある。
インド北部、シク教の聖地でありパキスタンと隣接する国境の街でもあるアムリトサルへやってきました。巡礼者が集い越境者が行き交うターバンとツーリストの街です。
インドに入った旅人がどこかで感じるかも知れない感覚が……
最近はボリウッド作品のヒットなどでインドに触れる機会も増え、そうでもなくなってしまったかもしれませんが、かつてはインド人と聞いて多くの人が想像するのが「髭・ターバン・額に点」という姿でした。
髭はインドではイケてるメンズのトレードマークなのでアリとして、実はこの額の点はヒンドゥー教徒の特徴でありターバンはシク教徒の特徴なので、現実ではそれらが混在することはありません。
もともとは映画などで「インド風の文化圏に暮らすインド人風の架空の民」を描く際のアイコンとしたものが、インド人をよく知らぬ人々の間にイメージ先行で誤って定着してしまったのでしょう。
インドでは80%弱がヒンドゥー教徒で、対してシク教徒は2%弱と少数派です。少数派と言っても母数が14億人強にもなるので実際には3千万人弱もいる訳ですが、やはり全土に分散しているとほとんど目につきません。
しかし、ここアムリトサルにはシク教の総本山である寺院があり、多くのシク教徒が巡礼で訪れる聖地となっていることから、街中のいたるところでターバンを巻いたシク教徒を目にすることになります。
インドに来たけど漠然と何かが足りないと思ったら、もしかするとそれはターバン不足なのかも知れません、アムリトサルを訪れてみてはいかがでしょうか?
記載内容は2025年3月時点のものです。ご旅行の際は最新の情報も合わせてご確認ください。
目次
【インド共和国(भारत गणराज्य/Republic of India)】
タイムゾーンはGMT+5:30で、日本より3時間半遅れています。
公用語はヒンディー語と英語ですが、ヒンディー語とは異なる言語を公用語としている州も多く存在します。また、英語も独特の訛りのヒングリッシュである場合が多いです。
パンジャーブ州ではパンジャーブ語を公用語としていますがヒンディー語も通じます。
通貨はインド・ルピー(₹と表記)で、記事中はルピーと記載します。
2025年3月現在のレートは1ルピーが1.6994円ほどですので、60ルピーなら日本での100円強の感覚ですね。
電源は220〜240V(50Hz)でコンセントはBタイプ・B3(D)タイプ・BFタイプ・Cタイプ、またはそれらのマルチタイプが一般的で、まれにAタイプにも対応したものもあります。
2025年3月7日 Day.185
昨夜ジャイプルを発った列車は北上を続け、ixogoアプリのリアルタイム情報を見る限りはジワジワと遅延が積み重なって気長なお話しになりそうです。
14:40、列車は18時間40分を走り抜け、最後の数駅で急に本気を出して定刻でアムリトサル・ジャンクション駅へと到着しました。
宿はひとまず駅近のShree Krishna Hotels、991ルピー(約1,685円)/泊でした。
駅近ということはやはりそういうことで、市街から離れていて不便ですが、いざとなれば20分も歩けば市街には出られます。
2025年3月8日 Day.186
ここアムリトサルは経由地としての滞在ですが、せっかく立ち寄ったので観光もしておきましょう。
ハリマンディル・サーヒブ(黄金寺院)
まずはシク教の総本山として多くの巡礼者が世界から集まる黄金寺院「ハリマンディル・サーヒブ」です。
ここは普段は「めーーーっちゃ混んでる」んですが、早朝だと「めちゃ混んでる」くらいらしいので朝8時を目指して出発しました。
大理石の白と純金箔の煌めきが水面に映えてとても美しいですが、とにかく人・人・人、橋と手前のゲート前はすでに大行列です。
寺院の中は撮影禁止ですが誰でも入ることができ、今の「めちゃ混んでる」程度で2時間待ちでした。
ただ、確かにとても豪華ではあるものの、部外者が総本山という感慨もなく見たところで「ほぇー綺麗っすねー」以上の感想はないと思うので、並ぶかどうかは慎重に吟味のほどを……
また、Langar Hallという看板の掲げられた建物ではシク教の教義である平等と分かち合いの実践として、寄付とボランティアによる無料の食事が用意されており、これはシク教徒に限らず異教徒も観光客も関係なく誰もが必要な時に必要なだけ受けられるものとして提供されています。
実際の流れですが、まずは食器を受け取って入室待ち、前の組が食事を終えて片付いたら入室、順番に食べ物が配られて食べ終わったら退室と、システマティックに流れて行きます。
希望すれば寄付をしたり、皿洗いのお手伝いなど活動の一環に参加することもできます。
国境の降旗式(フラッグ・セレモニー)
アムリトサルから西へ30kmほどにあるインド側ਅੱਟਾਰੀ/Attari(以下「アッタリ」)・パキスタン側واہگہ/Wahga(以下「ワガ」)国境は両国間の陸路で唯一開かれている国境で、ここでは1959年から続くインド・パキスタン両国による共同降旗式が毎日行われています。
両国の兵士がお互いの強さを誇示するパフォーマンスを息もピッタリに繰り広げ、互いの国旗を同じ高さを維持させながら慎重に降ろし、両国の兵士がガッチリと握手を交わして国境の門が閉じられるという、ショーアップされた名物セレモニーです。
(2025年5月11日追記)
2025年4月22日にインド北部のパキスタンとの領有係争地であるカシミール地方で起きたテロ事件を受け、2025年4月25日までに両国よりアッタリ国境・ワガ国境の即時閉鎖が決定されたようです。
2025年5月10日に両国は停戦には合意したものの、国境の閉鎖などを含む報復措置の解除については明言されていないようです。
2025年5月11日に共同降旗式は再開されたようです。
会場までの行き方はいろいろありますが、もっとも手っ取り早い観光用の送迎バスで行くことにしました。
このラウンドアバウトあたりにチケット売り場があって、バス乗り場もここら辺になります。料金は385ルピー(約655円)/人でした。
2階建てバスに浮かれて2階席を選んでしまいましたが、移動中ずっと外気と直射日光にさらされるのでエアコンの効いた1階席の方が正解だと思います。
なお、会場には手荷物検査もあり大きな荷物は持ち込めません。送迎バスに置いておくことは可能ですが不用心ですので、最初からパスポート・財布・撮影機材程度の軽装で臨むようにしましょう。
会場にはインド人オーディエンスが群衆で押し寄せていますが、それに混じって必死で席取りをする必要はありません。外国人観光客専用ブロックがありますので悠々と国境ゲートに一番近いブロックへと向かってください。
インド側は1万人収容の立派なスタジアムでスタンドの天空席までビッシリと埋まっていますが、対してパキスタン側は改修中かつ人もまばらで、何となくパキスタン側を応援したい気持ちにもなってきます。
まずは盛り上げ役の兵士によるコールアンドレスポンスで会場を存分に温め、女性兵士や軍犬によるパフォーマンスが続きます。くっ、ワンコかわいい!
そして選抜メンバーであろう男性兵士による行進からの足上げ、そして雄叫びで相手を圧倒します。マオリのハカのようでもあり、アリクイの威嚇のようでもあり……
最後は両国旗をどちらかが高くも低くもならないよう慎重に降ろし、両国の兵士が固い握手を交わすと両オーディエンスからも自然と拍手が湧き起こり、国境は閉じられたのでした。
終始和やかな雰囲気ではありますが、とは言えここは防衛最前線、パキスタン警備兵の猛者感あふれる佇まいに身が引き締まります。
両国は国としては敵対関係にこそありますが、これだけ息の合ったパフォーマンスのためにはお互い相当の練習を積んで交流も深まっていることだと思います。これからも関係が拗れることなく、このセレモニーのような平和的な意地の張り合いの域を越えることがないよう願わずにはいられません。
2025年3月9日 Day.187
ここアムリトサルに来た目的は隣国パキスタンに渡るためです。
パキスタンの入国準備
日本人がパキスタンに入国するには、観光目的であっても事前にビザを取得しておく必要があります。
ビザの申請は2021年2月よりすべてオンライン化されており、Pakistan Online Visa SystemからオンラインでTourist Visaの申請を行います。私たちは事前に申請して2日で90日マルチのビザが承認され、費用は無料でした。1
明日からは降旗式で見た国境のど真ん中を通ってパキスタンです!
パキスタン観光開発公社は2024年8月13日に日本を含む126カ国に対して商用と観光用の電子査証の申請にかかる費用の無料化を発表し即日適用しています。 ↩︎