タイから向かった1カ国目はベトナム。

社会主義という字面と赤い国旗から、ピリピリした感じの勝手なイメージを抱いており、サラッと『ハロン湾とやらだけ見てこよう』くらいの気持ちで組み入れました。

安さに飛びついた飛行機は遅延に遅延を重ね、初めてのLCCの洗礼を浴びることになるのです。

記載内容は2012年3月時点のものです。ご旅行の際は最新の情報も合わせてご確認下さい。

目次

【ベトナム社会主義共和国(Cộng hoà Xã hội chủ nghĩa Việt Nam/Socialist Republic of Vietnam)】

通貨はドン(₫と表記)で、記事中はドンと記載します。 2012年3月現在のレートは1ドンが0.004円強ですので、日本円へは『ゼロを3つ取ってから4倍』くらいの換算で、25,000ドンなら100円ちょっとですね。

※桁が多くなるため基本的に千単位に省略して語られます(25,000ドンであれば25Kや25など)。

2012年3月5日

「カブ天国。ベトナム戦争でアメリカにギャフンと言わせたガッツある民。ベトちゃんドクちゃん。」

ベトナムについて知っていることは多くはなく、先人達の残した旅行記によると、非常に商魂たくましく外国人には桁違いにふっかけてくる上、値切ろうものなら罵倒され追い返される勢いである、と…。

何やら面倒くさそうな感じですが、であればなおさら、今回のような『通りがかりついで』くらいが好機かと、まずは弾丸でベトナムに向かいます。

空港で夜明かし

滞在日数も絞っており、着いてからの時間を有効に使いたい、そして何より遅延対策を兼ねてフライトは早朝便を選びました。

LCCの短距離線は単機によるピンポン輸送が基本で、遅延は次発便へと次々と累積され、遅い便ほど遅延の影響を強く受ける傾向があります。

搭乗予定のタイエアアジアFD3700便は早朝便6:05発で、4時過ぎには空港に着いていたいところですが、そんな時間に空港まで適正料金で行ってくれるタクシーは存在しないと思われ、前夜遅くにエアポート・レール・リンク(รถไฟฟ้าเชื่อมท่าอากาศยานสุวรรณภูมิ/Airport Rail Link, ARL)で空港入りして、そのまま早朝まで空港内で過ごす作戦にしました。

LCCって遅延するって言うけど実際は?

ベンチでウトウトしながら朝を待ち、無事にチェックインを済ませて搭乗ゲートへ直行してみると、まだゲートが開いていません。

居場所もないので、空港内をウロウロしながら通いますが、全くゲートが開く気配がありません。

いよいよ搭乗開始時間が迫った頃になって、ようやく『Delay』とマジックでなぐり書いた紙が貼り出されました。

噂には聞いてはいたものの、定刻通りとは行かないようで…。

近くに張り付いて待ってみると、離陸予定時間になって『2hours』と書き足され、小一時間ほど暇を潰して戻ると『2hours 10:00am』と書き換えられました。

4時間遅れが確定しましたが、時間が分かっただけありがたい…。

そして9時過ぎに「また遅延のおかわりだったりして?」なんて話しながらゲートを見に行くと、ゲートの便名表示も紙も消えて…えーっ!?

焦ってキョロキョロしていると、通りかかった空港職員がゲートが変わったと教えてくれ、そちらに走るとゲートが開いており一安心。

場を離れる時は、都度、必ずゲート案内表示を確認してから向かうようにしましょう。

お昼近くになってようやく、空港で12時間以上を過ごしグッタリ気味の私たちと、6時間遅れなど気にもとめない乗客たちを詰め込んで、飛行機は飛び立ちました。

ノイバイ国際空港から市街への移動

飛行機は2時間弱でベトナムはハノイ(Hà Nội/Hanoi)のノイバイ国際空港(Cảng hàng không quốc tế Nội Bài/Noi Bai International Airport)へと着陸。

空港を出るとタクシーの客引きが寄ってきますが、それらはスルーしてターミナルを出て左手のタクシー乗り場へ向かいます。

ノイバイタクシーの料金表 ノイバイタクシーの料金表

掲示されていた料金表によると、市街まではメーターで315,000ドン(約1,264円)で、料金表を紹介しておいてなんですが、Mailinh (マイリン) またはVinasan (ヴィナサン) という会社が比較的トラブルが少ないそうなので、このNoibai (ノイバイ) も通り過ぎます(笑)

ヴィナサンタクシーが数台集まっている辺りで配車係にホテルを告げ、指定されたタクシーに乗り込んだ後、メーターが回り始めたこと、不自然なメーター速度でないことを見届けて、ホッと一息です。

なお、メーター表示は千単位に切り捨てられた表示になっていました。

ホテルの細さに見るベトナムの建築事情

私たちはホアンキエム湖(Hồ Hoàn Kiếm/Hoan Kiem Lake)と旧市街あたりのエリアにホテルを取っていました。

ホリデイエメラルドホテル

ハノイの町並みを見ていると、一つ一つの建物の幅がやたらと狭く、細長い建物が密集しています。

土地が足りていないのかと思っていたのですが、そういう訳ではなく、ベトナムでは建物の間口の広さに応じた課税制度になっており、それを逆手に取って、建物は幅狭く奥深く高さで稼ぐスタイルが普通なのだそうです。

このホテルも各フロア毎に客室は1室という細さで、高さで部屋数をカバーしていましたが、上の階は建て増して行った物なのか、6階建てなのにエレベーターがなく階段のみでした。

4階の部屋が割り当たり、階段でタイから引き上げた荷物でパンパンのスーツケースに難儀していたのですが、そんな様子を見ていたホテルのボーイさんがスーツケースをヒョイと担いで階段を駆け登り、部屋を案内するやサムズアップして笑顔で去って行きました。

何をするでもなくエレベータで部屋までついてきてはチップ欲しげにモゾモゾと長居しようとするのを追い返す…そんないつものパターンとは真逆のプロフェッショナルな姿勢に驚き、ただただ、後ろ姿に「Xin (シン) cảm (カム) ơn (オン) !(ありがとう!)」と伝えることしかできませんでした。

カブ天国という歩行者地獄の歩き方

チェックインの後は早速、散歩へと繰り出したのですが、さすがはカブ天国、途切れることのないバイクの波が直進右左折ゴチャ混ぜに突っ込んで来て、道路を渡るに渡れません。

立ちはだかるカブ軍団 立ちはだかるカブ軍団

写真の通り、厳密にはHONDA Super Cubはそれほど多くはなく、同形式のボディーにスクーターのカウルを合わせた東南アジアで良く見かけるスクーターで溢れかえっています。

現地の方に倣ってみると、待っていても途切れるタイミングなどないので、最初の1台だけかわせるタイミングで踏み出し、あとは止まらず、戻らず、走らず、アイコンタクトを送りながら、ゆっくり一定速度で進み続ける。

そうするとバイク側が勝手に脇をすり抜けてくれるようです…が、自動車はそうも行かないので、車をやり過ごすペースとなるよう微妙に配分を調整するようです。

慣れないうちは、地元の方にカルガモというか横並びに位置取って真似ながら徐々に感覚をつかむのがおすすめです。

2012年3月6日

初日はフライト遅延の影響でほぼ単なる移動日になってしまいましたが、ベトナム2日目はちょっと観光です。

世界遺産『ハロン湾』

日本から事前に現地オプショナルツアー取り扱いのVELTRAで予約していたので、ホテルでピックアップしてもらって、あとはお任せです。

ハロン湾(泳下龍)(Vịnh Hạ Long/Ha Long Bay)はハノイから東に180kmで車で4時間ほど、プライベートツアーではなく混載ツアーですが、日本人のみという安心感と前日の寝不足と早起きも手伝って、車内では爆睡でした。

入場料はツアー代金に含まれていましたが、入場券によると80,000ドン(約321円)だったようです。

ハロン湾に霞む奇岩群 ハロン湾に霞む奇岩群

ぐずついた天気も相まって、かえって幻想的にも思える景色の中、200,000ドン紙幣に印刷されている香炉岩や名菓ひよ子が並んだ感じの闘鶏岩など、近場の風景を楽しんでいるうちに食事の用意が整い、皆で料理を楽しむ間に船は湾の沖へと加速します。

食べ終わった頃には周りの景色も変わり『海の桂林』と言わしめる巨岩そそり立つ景色が広がります。

なお、この日はベタ凪で、船は全く揺れませんでした。

湾内ということと、複雑に入り組んだ巨岩の効果で波も入って来ず、地形的に荒れにくい海なのではないかと思うので、船酔いの心配はなさそうに思います。

ハロン湾 ハロン湾

途中、複数組に分かれて小舟に乗り換え、水面ギリギリに空いた穴を通って岩山の裏側を見せてもらったりしましたが、裏手に入るや漕ぎ手のオバちゃんが「5ドルね」などと言い出しました。

ガイドからは何の説明もなかったので絶対にコミコミのはずと踏み、私たちの組は「ガイドに言ってね」と一蹴したのですが、別の組の方たちは訳が分からずに支払ったそうです。

船に戻って確認すると、船代は不要だけど「チップを出して頂いたならオバちゃん達も喜んだだろうね」と。

チップ扱いされては返金要求も出来ず、これは上手い返しですね。

ティエンクン洞窟

ティエンクン洞窟 ティエンクン洞窟

途中、鍾乳洞にも寄ると聞いていましたが、それがこのティエンクン洞窟(天宮洞)(Động Thiên Cung/Thien Cung Cave)で、巨岩の一つにポッカリ空いた鍾乳洞です。

日本でよくある洞窟と言うより『窪みかな?』という観光洞窟を想像していて、さほど興味を持たずに来たのですが、この鍾乳洞、川口浩探検隊シリーズのロケが出来るスケールでかなり楽しめます。

広大でカラフルなティエンクン洞窟 広大でカラフルなティエンクン洞窟

カラフルにライティングされているのは日本人の感覚からするとアレですが、これはこれで綺麗ではあります。

白いライトの下の方に何人もの人が写っているのですが、それと比べると洞窟のスケール感が想像以上であることが分かりやすいかも知れません。

着いた時こそ曇天で残念とも思ったのですが、煙った感じもまた雰囲気があり、ハロン湾クルーズはドシャ降りでもない限りは安定して楽しめるディスティネーションでした。

ホアンキエム湖はのんびり過ごすのに最適

日帰りツアーから戻った後、まだ陽もありますので、再び市内をお散歩です。

ホアンキエム湖 ホアンキエム湖

ホアンキエム湖に出てみると、ベンチでカップルが語らっていたり、タキシードにドレス姿の何組もの新婚さんがウエディング・フォトを撮影していたり、かと思うと、その横ではお年寄りが謎動作の健康体操を無限ループしています。

それぞれが思い思いに過ごしている感じが気持ちよく、ひと回りしていると、そういえばお腹が空いた…。

フォーとベトナムコーヒー フォーとベトナムコーヒー

ベトナムと言えばフォーということで、湖を囲む道路を挟んで『Phở 24』というチェーン店っぽい佇まいのお店が見え、そこに飛び込んでみました。

何でもないごく普通のフォーを注文したつもりが生肉を乗せたフォーが出てきて、生はちょっと…と腰が引けつつ初めて食べましたが、この半生牛肉の味とダシがめちゃめちゃ美味い!

これ以来、フォー屋さんでは真っ先に『フォー・ボー・タイ(Phở Bò Tái/Vietnamese Rare Beef Noodle Soup)』を注文するようになりました。

鶏肉フォーはフォー・ガーなので、ガーが鶏でボーが牛、タイはレアって意味でしょうか?

2012年3月7日

アッという間でしたが、早朝、ベトナムを出ます。

二泊三日というか一泊二日に近い弾丸での滞在でチラ見だけしに来たベトナムでしたが、予想に反しピリピリどころか居心地良く、日本人の胃袋をグッと掴む優しい味わいの『辛くない』料理もありがたい。

ひとつ注意点というより相違点として、街全体として朝型でビジネスタイムが早朝にシフトしており、夜にグズグズしていると店が軒並み閉店して食いっぱぐれますので、滞在中は早寝早起きで行動するのが良さそうです。

名残惜しさを感じるのは気に入ったからこそ、物足りなさの分だけ次回の楽しみが広がります。

次回の訪越を確信しながら、キッチリと定刻運行で汚名返上した早朝のタイエアアジアFD3701便でバンコクへと戻ります。